
資産運用立国は前途多難
―株価乱高下、口座乗っ取り…新NISA投資家に試練
資産運用立国は前途多難
―株価乱高下、口座乗っ取り…新NISA投資家に試練
政府が掲げる「資産運用立国」のメインメニューとして2024年からスタートした新NISA。金融機関の働きかけやメディアにも取り上げられ、NISA口座数は1年で約17%増の2560万口座となるなど、順調に増加した。20代若年層の利用意欲が高いのが特徴だが、株価が高水準となる中、乱高下する場面もみられ、投資ビギナーたちを不安に陥れたようだ。
いわゆるトランプ関税では、全世界を対象とした「相互関税」の発表後、日経平均が2000円前後の急落と急騰を繰り返すというかつてないジェットコースター相場を演じた。目を見張る展開に狼狽売りもみられたが、長期の資産形成を目指す新NISA、とりわけ、積立NISAであれば、一喜一憂することなく、継続することが問われているといえる。
こうした中、自民党の「資産運用立国議員連盟」がぶち上げたのが高齢者向けの「プラチナNISA」である。高齢者には新NISAも旧NISAも開放されているが、高齢者ニーズの強い毎月分配型投資信託は、資産形成に資さないとしてNISAの対象外。これを高齢者に限って解禁しようとする。分配金を年金の足しにしたい退職世代に人気の商品だが、元本取り崩しの常態化が問題視され、NISAから排除された経緯がある。高い分配金を維持するには元本に手を付けざるを得ず、元本を減らさないためには分配金を減らしたり、無しにする必要が出てくる。外資アセットマネジメント会社の運用力に期待をかけているようだが、中長期的に高配当を続けるのは誰しも容易ではない。取り崩しは承知の上、銀行の預金取り崩しでは面白くない、既製の運用商品で取り崩しを遅らせられないか、といったニーズに応えるものだろうか。「タコ足配当(タコ配)」を避けるには、ETFやJリートに目を向けるべきだろう。
一方で、このところ急増したのが証券口座乗っ取り詐欺である。中国系とされる組織にセキュリティの脆弱性とデジタル技術の進化で口座が狙い撃ちされた。AIの進化によりセキュリティとなっていた「日本語の壁」が崩壊したともいわれる。根幹を揺るがす事態に、ログイン認証が強化され、多要素認証が必須化されたが、フィッシングのほかに、ソフトウェア感染によるパスワード詐取もある。「日本語の壁」崩壊に伴い、日本ターゲットのハッキングをどう防いでいくか。「資産運用立国」の前に、立ちはだかる課題といえる。
2025.07.04