経済危機到来でオフィス価格が4割下落

―三菱UFJ信託、住宅は安定性反映を想定

 三菱UFJ信託銀行は、過去の経済危機における不動産マーケットを分析して、将来の経済危機時での国内における不動産価格の変動を想定したレポートを公表した。レポートでは、不動産価格の構造を収益還元法で分解し、キャップレートは金利要因、リスクプレミアム要因、賃料の推移など成長要因から算出。リーマン・ショック(08年)やコロナ・ショック(20年)以降の価格推移から、リーマン時を目安に都心のオフィスは最大40%までの価格下落を想定した。

 不動産コンサルティング部ジュニアフェローの舩窪芳和氏は、経済危機による予測を「不動産市場のプレイヤーに収益還元法が浸透したこともあり、バブル崩壊時のような市況悪化は起きにくい」と想定する。

 リーマン・ショック後、09年上期にキャップレートの上昇幅が最大となり、ショック発生前と比べて、不動産価格はオフィスが26%の下落、住宅が21%の下落だった。その後、13年下期に景気が影響した賃料低下幅が最大で、価格はオフィスが38%の下落、住宅が15%の下落だった。コロナ後は、ショック発生前と価格を比較して、オフィスは2%下落したが、住宅は25%の上昇だった。リーマン時は信用収縮が起き、コロナ時には極端な信用収縮はなかったことが影響したとみられる。舩窪氏は「オフィス価格の動きに対して、住宅は賃料の安定性によるメリットが目立っている」とする。

 今後は、不動産市場のプレイヤーの信用低下や不透明感などが著しくみられる場合、取引の流動性低下によるリスクが生まれる可能性があるという。舩窪氏は現状の不動産市場を「リーマン・ショック前と比較してもキャップレートの水準は低く、リスクプレミアムが圧縮されている状態」とみている。 

2025.06.27