外資不動産ファンド、東京でも投資手仕舞いも
―円安でも利回り低下や金利に先高観
2年超にもおよぶコロナ禍は世界的なカネ余りを生み、それが不動産投資市場の活況に繋がった。東京の不動産市場はどうだったのか。投資家サイドの投資需要が圧倒的にある一方で、その需要に見合った十分な物件の供給がなされておらず、最終的な物件価格が上がり続けている。ファンドなど機関投資家の需要は、超低金利に加え、ロックダウンや外出制限といったコロナによる影響が小さい東京の不動産をポートフォリオに組み込んだ。供給が少ない状況に対応するため、こうしたファンドが1物件数億円といった小型の物件を数多く購入し、数十億円規模のファンドに仕立て上げるのもコロナ禍で目立った動きだ。価格の上昇で利回りは急降下。東京都区部周辺の投資用賃貸住宅の利回りは数年前まで6,7%はあったが、今は3%台も珍しくない。それでも外資のファンドは円安という為替差益もあることから買いに対する関心はまだついてきている。
だが、ここにきて世界的な投資意欲が曲がり角を迎えている。金融緩和が出口を迎えた米国、あるいは中国・上海などでは不動産価格がじわり下がり始めた。こうした外的要因から、これまでとは異なる動きをするファンドが現れはじめた。外資の不動産投資ファンドの動向に詳しいある国内の専門家によれば、ここ「2,3カ月の動き」として、世界的な不動産ファンドで、投資家が日本国内のポートフォリオへの投資意向があるにも関わらずそれを断り、東京への投資を実行しない事例が出た。日本を含め投資の手じまいをはじめたファンドが出始めているという。
継続して東京へ投資する意向のファンドもあるが、積極・消極ともに共通しているのは黒田・日銀総裁の任期終了後の金利動向についての関心だ。異次元緩和という金融政策が少しでも修正されるようなことがあれば、積極的なファンドも心変わりする可能性は高い。「不動産投資市場は今がピーク」とも見方もある。風向きが変わり始めた可能性がある。
2022.10.28