ロシア侵攻で変わる世界と不動産ビジネス
俄かに核シェルターに注目
ロシアなどによる核・生物化学兵器(NBC)脅威に対し、反応したのが核シェルター需要である。50年以上にわたり核シェルターの建築・販売を手掛けたシェルター(大阪・羽曳野市)には、「ロシア侵攻前は月数件だった問い合わせが一気に50~60件に増えた」(西本誠一郎・代表取締役)という。実際、地下シェルターをつくる場合、地盤やコストなど制約がかかるが、地上の建物内に、放射能汚染した空気から身を守る空気ろ過器などを配備する簡易な核シェルター施設を提案するケースも少なくない。
一方、富裕層向けに、核シェルター付き高級住宅の開発を本格化するのがアメリカンハウスを展開するアンカーハウジング(川崎市)である。ロシア侵攻でシェルターに関する問い合わせが急増し、シェルター設備の製造を提携工場でスタートさせた。問い合わせが入れば、まず現地調査に入り、施設配備の実現性を確かめるが、今後は、東京近郊の実現可能なエリアや用地でのプロジェクト展開を図る。米国仕様の核シェルターと家庭用プールが付いた高級アメリカン住宅を7000万~8000万円程度、プールなしであれば4000万~5000万円程度で供給を進める。「シェルターは、家族が2週間暮らせる仕様だが、普段はテレワークなどに使える」(吉山和實・代表取締役社長)として普段使いできる利点も挙げている。
地下シェルターの多様な利活用について研究報告したのが「防災地下シェルターの普及に関する研究会」(主査=南野貴洋・大和ハウス工業総合技術研究所主任研究員)である。海外の地下シェルターに関する建築基準を調査したうえで日本型の地下シェルター建築基準づくりを目指しているほか、音楽室やトレーニング室など多様な利活用も提案している。シェルターの国内普及に向け、補助金や税制優遇などの政策提言にも取り組む。
2022.04.28