コロナ禍ではあるもののマンション価格が下がらない理由

 新型コロナウィルスの蔓延で国内景気は揺らぎ、先日発表された基準地価(都道府県地価調査、7月1日時点)では日本の地価は3年ぶりの下落となった。インバウンドの減少などから地方圏や商業地を中心に下落したものの、内訳をみると東京圏では住宅地が0.2%の微減にとどまり、商業地に至っては1.0%の上昇。都道府県別でみると、東京都は住宅地が0.2%、商業地が1.3%それぞれ上昇している。コロナ禍でも上昇を維持した東京の住宅市場、とりわけ分譲マンションの価格動向から今後の住宅市場動向を占ってみたい。

 不動産経済研究所の調べによると、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県)の新築分譲マンション市場は、今年上半期(1~6月)の供給戸数が7497戸と、前年同期比44.2%減と大幅な減少となった。新型コロナウィルスの感染拡大の影響などから、多くの物件でモデルルームを閉鎖するなど、販売活動を自粛したことが影響したためだ。

 その一方で価格は戸当たりの平均で6668万円となっており、前年同期比で8.7%も上昇した。マンション分譲業者は、価格を引き下げたところですぐにエンドユーザーが戻るわけではないと判断し、一時的に様子見をしていたようだ。直近の価格をみると、7月の首都圏マンションの戸当たり平均価格は、前年同期比で7.9%上昇の6124万円に、続いて8月は6011万円と前年同期比6.2%の下落となったが、平米あたりの単価は前年同月比で4.2%上昇した。

 このような価格高止まりの理由として、分譲主であるデベロッパーが資金繰りに窮しておらず、手持ちの物件を売り急いでいないことが挙げられる。直近で価格が大幅に下落したリーマン・ショックの頃と異なり、今回のコロナ・ショックは金融機関の痛手が少なく、金融機関側も低金利、マイナス金利で資金調達コストがほぼゼロとなったため、デベロッパーに対して早期返済を促すような環境ではない。そのため市場からユーザーが退避したとしても、売主側は価格を下げてでも売らなくてはいけないという状況にはならなかった。マンション市場はリーマン・ショック後の10年間で体力のある大手デベロッパーによる市場寡占化が進んでいる。彼らは予め販売価格を高めに設定し、完成売りなどで時間を掛けて売り続けるようになった。

 マンション平均販売価格の「バブル期超え」が継続していることから、コロナによってバブルが崩壊するのでは?という期待もあるだろうが、恐らく価格は下がらないとみたほうがいいだろう。前述の金融環境に加えて、バブル期当時との比較で利便性の高い物件が増えていることも理由の一つ。例えば駅徒歩5分以内の物件の比率がバブル期は2割前後だったのが、いまは5割と高く、利便性という不動産そのものの魅力が裏付けされている。これらの理由から東京の住宅市場、とりわけ分譲マンション市場はコロナ禍にあっても、上昇を続けていくと考えたほうがいいだろう。

2020.10.02